記事12:相続した農地、どうする?転用・売却・そのまま所有の判断基準

「実家の農地を相続したけど、農業はしない」 「相続した田んぼ、どうしたらいいか分からない」

相続で農地を引き継ぐことは珍しくありませんが、農業を続けない場合、どう扱うべきか悩む人は多いです。

ここでは、相続した農地の選択肢と判断基準を解説します。

まず知っておくべき重要なこと:相続届出の義務

農地を相続したら、まず以下の届出が必要です。

農地法第3条の3の届出

  • 相続等により農地を取得した場合に必要
  • 農業委員会への届出
  • 相続を知った日から10か月以内

これは「許可」ではなく「届出」ですが、法律上の義務です。

届出を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

「何もしなくていい」という認識は誤りです。まず農業委員会に届出を行いましょう。

相続した農地、4つの選択肢

相続した農地には、大きく分けて4つの選択肢があります。

1. そのまま所有を続ける 農地として管理し続ける

2. 転用して活用する 住宅、駐車場、太陽光発電などに転用

3. 売却する 農地のまま売却、または転用してから売却

4. 相続土地国庫帰属制度を利用する 一定の要件を満たせば、国に引き取ってもらう

どれが正解かは、状況によって異なります。

選択肢1:そのまま所有を続ける

メリット

  • 特別な許可は不要(※農地法第3条の3の届出は必要)
  • 将来的に活用できる可能性を残せる
  • 農地は固定資産税の評価が低い(ケースによって異なります)

デメリット

  • 管理の手間がかかる(草刈りなど)
  • 耕作放棄地になると近隣から苦情が来ることも
  • 使わない土地を持ち続けるコスト

こんな人に向いている

  • 将来的に使う予定がある
  • 農地として誰かに貸せる見込みがある
  • 管理の手間を惜しまない

選択肢2:転用して活用する

メリット

  • 土地を有効活用できる
  • 収益を生む可能性がある(駐車場、賃貸住宅など)

デメリット

  • 農地法4条または5条の転用許可が必要
  • 費用がかかる(造成、建築など)
  • 固定資産税の評価が上がる(ケースによって異なります)

主な活用方法

  • 自宅を建てる
  • 駐車場にする
  • 賃貸住宅を建てる
  • 太陽光発電を設置する
  • 資材置き場として貸す

こんな人に向いている

  • その土地に住む、または事業で使う予定がある
  • 収益化したい
  • 転用許可が取れる見込みがある(青地でないなど)

選択肢3:売却する

農地のまま売却(農地法3条)

農地を農地として売却する場合、農地法3条の許可が必要です。

  • 買い手は農家または農業法人に限られる
  • 価格は低め
  • 買い手が見つかりにくいことも

転用してから売却(農地法5条)

宅地として売却する場合、農地法5条の許可が必要です。

手続きの流れ:

  1. 農地法5条許可を取得
  2. 造成工事を実施(必要な場合)
  3. 地目変更登記
  4. 宅地として売却

転用後は買い手が広がり、価格も高くなる可能性があります。

ただし、青地(農用地区域内農地)は原則として転用不可(農振除外手続きが必要)です。

選択肢4:相続土地国庫帰属制度を利用する

「相続したが使い道がない」 「管理もできない」 「売却も困難」

こうした場合、相続土地国庫帰属制度という選択肢があります。

制度の概要 相続または遺贈により取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。(令和5年4月27日施行)

注意点

  • 要件が厳しい
  • 負担金の支払いが必要
  • 農地は、農業上の利用が困難であるなど一定の要件を満たす必要がある
  • すべての農地が対象になるわけではない

「使い道がない農地を処分したい」という方は、まず専門家に相談してみましょう。

どの選択肢を選ぶべきか:判断のポイント

ポイント1:その農地は転用できるか?

  • 青地(農用地区域内農地)は原則として転用不可(農振除外手続きが必要)
  • 市街化区域内なら転用しやすい

ポイント2:立地はどうか?

  • 市街地に近い → 転用・売却の価値が高い
  • 山間部や過疎地 → 売却は難しい

ポイント3:自分の生活との関係は?

  • 近くに住んでいる → 管理しやすい
  • 遠方に住んでいる → 管理が負担

ポイント4:時間と費用に余裕はあるか?

  • 転用や売却には費用と時間がかかる
  • 所有を続けるなら管理費用がかかる

実務上の重要ポイント

農地法の規制は厳しく、原則として「農地として利用する」か「法定の手続きを経て転用・売却する」必要があります。

相続しただけでは自由に売却・転用できません。

まず確認すべきことは:

  1. 農業委員会に相続届出(農地法第3条の3・10か月以内)
  2. その農地の区分を確認(青地・白地・市街化区域・調整区域)
  3. 転用や売却の可能性を農業委員会に相談

この3つを最初に行うことが最優先です。

よくある失敗

1. 放置してしまう 「いつか考えよう」と先延ばしにし、耕作放棄地になってしまう。また、相続届出を怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

2. 転用できない農地と知らずに計画を進める 青地なのに気づかず、転用前提で話を進めてしまう。

3. 売り急いで安く手放す 適正価格を調べずに、買い叩かれてしまう。

まとめ

相続した農地の選択肢:

  1. そのまま所有 → 将来使う予定があるなら(届出は必要)
  2. 転用して活用 → 自分で使う、収益化したいなら(4条または5条許可が必要)
  3. 売却 → 手放したい、現金化したいなら(3条または5条許可が必要)
  4. 国庫帰属制度 → 使い道がなく処分したいなら(要件あり)

最初にやること
✅ 農地法第3条の3の届出(農業委員会へ、10か月以内)
✅ 農地の区分を確認(青地・白地・市街化区域・調整区域)
✅ 農業委員会に相談して活用方法を検討

判断に迷ったら、まず農業委員会に相談しましょう。

次回は「農地転用と建築確認、どちらが先?手続きの正しい順序」を解説します。