「実家の農地を相続したけど、農業はしない」 「相続した田んぼ、どうしたらいいか分からない」
相続で農地を引き継ぐことは珍しくありませんが、農業を続けない場合、どう扱うべきか悩む人は多いです。
ここでは、相続した農地の選択肢と判断基準を解説します。
まず知っておくべき重要なこと:相続届出の義務
農地を相続したら、まず以下の届出が必要です。
農地法第3条の3の届出
- 相続等により農地を取得した場合に必要
- 農業委員会への届出
- 相続を知った日から10か月以内
これは「許可」ではなく「届出」ですが、法律上の義務です。
届出を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
「何もしなくていい」という認識は誤りです。まず農業委員会に届出を行いましょう。
相続した農地、4つの選択肢
相続した農地には、大きく分けて4つの選択肢があります。
1. そのまま所有を続ける 農地として管理し続ける
2. 転用して活用する 住宅、駐車場、太陽光発電などに転用
3. 売却する 農地のまま売却、または転用してから売却
4. 相続土地国庫帰属制度を利用する 一定の要件を満たせば、国に引き取ってもらう
どれが正解かは、状況によって異なります。
選択肢1:そのまま所有を続ける
メリット
- 特別な許可は不要(※農地法第3条の3の届出は必要)
- 将来的に活用できる可能性を残せる
- 農地は固定資産税の評価が低い(ケースによって異なります)
デメリット
- 管理の手間がかかる(草刈りなど)
- 耕作放棄地になると近隣から苦情が来ることも
- 使わない土地を持ち続けるコスト
こんな人に向いている
- 将来的に使う予定がある
- 農地として誰かに貸せる見込みがある
- 管理の手間を惜しまない
選択肢2:転用して活用する
メリット
- 土地を有効活用できる
- 収益を生む可能性がある(駐車場、賃貸住宅など)
デメリット
- 農地法4条または5条の転用許可が必要
- 費用がかかる(造成、建築など)
- 固定資産税の評価が上がる(ケースによって異なります)
主な活用方法
- 自宅を建てる
- 駐車場にする
- 賃貸住宅を建てる
- 太陽光発電を設置する
- 資材置き場として貸す
こんな人に向いている
- その土地に住む、または事業で使う予定がある
- 収益化したい
- 転用許可が取れる見込みがある(青地でないなど)
選択肢3:売却する
農地のまま売却(農地法3条)
農地を農地として売却する場合、農地法3条の許可が必要です。
- 買い手は農家または農業法人に限られる
- 価格は低め
- 買い手が見つかりにくいことも
転用してから売却(農地法5条)
宅地として売却する場合、農地法5条の許可が必要です。
手続きの流れ:
- 農地法5条許可を取得
- 造成工事を実施(必要な場合)
- 地目変更登記
- 宅地として売却
転用後は買い手が広がり、価格も高くなる可能性があります。
ただし、青地(農用地区域内農地)は原則として転用不可(農振除外手続きが必要)です。
選択肢4:相続土地国庫帰属制度を利用する
「相続したが使い道がない」 「管理もできない」 「売却も困難」
こうした場合、相続土地国庫帰属制度という選択肢があります。
制度の概要 相続または遺贈により取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。(令和5年4月27日施行)
注意点
- 要件が厳しい
- 負担金の支払いが必要
- 農地は、農業上の利用が困難であるなど一定の要件を満たす必要がある
- すべての農地が対象になるわけではない
「使い道がない農地を処分したい」という方は、まず専門家に相談してみましょう。
どの選択肢を選ぶべきか:判断のポイント
ポイント1:その農地は転用できるか?
- 青地(農用地区域内農地)は原則として転用不可(農振除外手続きが必要)
- 市街化区域内なら転用しやすい
ポイント2:立地はどうか?
- 市街地に近い → 転用・売却の価値が高い
- 山間部や過疎地 → 売却は難しい
ポイント3:自分の生活との関係は?
- 近くに住んでいる → 管理しやすい
- 遠方に住んでいる → 管理が負担
ポイント4:時間と費用に余裕はあるか?
- 転用や売却には費用と時間がかかる
- 所有を続けるなら管理費用がかかる
実務上の重要ポイント
農地法の規制は厳しく、原則として「農地として利用する」か「法定の手続きを経て転用・売却する」必要があります。
相続しただけでは自由に売却・転用できません。
まず確認すべきことは:
- 農業委員会に相続届出(農地法第3条の3・10か月以内)
- その農地の区分を確認(青地・白地・市街化区域・調整区域)
- 転用や売却の可能性を農業委員会に相談
この3つを最初に行うことが最優先です。
よくある失敗
1. 放置してしまう 「いつか考えよう」と先延ばしにし、耕作放棄地になってしまう。また、相続届出を怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
2. 転用できない農地と知らずに計画を進める 青地なのに気づかず、転用前提で話を進めてしまう。
3. 売り急いで安く手放す 適正価格を調べずに、買い叩かれてしまう。
まとめ
相続した農地の選択肢:
- そのまま所有 → 将来使う予定があるなら(届出は必要)
- 転用して活用 → 自分で使う、収益化したいなら(4条または5条許可が必要)
- 売却 → 手放したい、現金化したいなら(3条または5条許可が必要)
- 国庫帰属制度 → 使い道がなく処分したいなら(要件あり)
最初にやること
✅ 農地法第3条の3の届出(農業委員会へ、10か月以内)
✅ 農地の区分を確認(青地・白地・市街化区域・調整区域)
✅ 農業委員会に相談して活用方法を検討
判断に迷ったら、まず農業委員会に相談しましょう。
次回は「農地転用と建築確認、どちらが先?手続きの正しい順序」を解説します。
